ヒト表皮角化細胞における
紫外線ストレスへの対策法の検討
背景・目的
皮膚細胞は紫外線による細胞損傷やDNA傷害によって、細胞死やがん化を引き起こす。
中でも、皮膚の最外層に存在する表皮角化細胞は、紫外線のうちUVBによるストレスを最も受け、
細胞死やがん化によって皮膚のバリア傷害を引き起こし、やがて様々な皮膚疾患につながると言われている。
この紫外線傷害に拮抗する物質として知られているのが熱ショックタンパク質HSP70である。
これまでHeat Shock等によってHSP70が発現誘導され、DNA傷害の修復が促進され細胞死を防いだという
報告がある。
また、近年、ヒト線維芽細胞において近赤外線(NIR)照射によって紫外線による細胞死が
防がれたという報告があり、 HSP70が関与していると示唆されてはいるが、正確な結果は得られなかった。
本実験では正常ヒト表皮角化細胞に近赤外線照射を行い、HSP70が発現誘導されれば
DNA損傷や細胞死が防がれ、その結果、がん化や皮膚疾患を予防できるのではないかという
作業仮説を立て、検討を行っている。
現在までの結果
①nIR照射によるHSP70の発現亢進
②nIR照射後UVB照射によるDNA損傷修復率上昇
③nIR照射による細胞生存率は変化なし
今後の展望
①紫外線傷害修復タンパク質であるXPCタンパク質、XPAタンパク質の発現検討
②HSP70ノックダウン細胞におけるDNA損傷修復検討
③カルシウムイメージング法を用いたnIR照射による応答メカニズム