>English

がん細胞由来エクソソーム中GRP78の血管新生作用解明



[概要]
がん細胞が分泌するGRP78というたんぱく質のがん進行作用を、 細胞外輸送小胞「エクソソーム」に着目して研究しています。
[背景]
GRP78(Glucose-Regulated Protein 78 kDa)はがん進行研究で注目されているタンパク質 のひとつです。通常の細胞において、GRP78は小胞体内部で細胞機能維持のために働きます。 しかし細胞ががん化すると小胞体の外にも存在するようになり、あらゆる細胞機能に働きかけて がん進行を促進します。また、がん細胞から分泌されたGRP78は他の正常細胞に影響を及ぼし、 腫瘍微小環境(Tumor Microenvironment: TME)の構築に関与することが 明らかになりつつあります(図参照)。
「腫瘍微小環境構築」は、がん細胞が周囲の非がん細胞に働きかけ、その性質を作り変えてしまうという、 腫瘍の巧妙な成長戦略です。この仕組みによる細胞の性質の作り変えが、 腫瘍をとりまく環境「腫瘍微小環境」をがん進行に適したものへと変化させ、 腫瘍の成長・転移のもととなります。
[研究内容]
がん細胞が分泌した細胞外輸送小胞「エクソソーム」中のGRP78のがん進行作用を明らかにすることを 目標としており、胃がんを専門的に研究している義守大学(台湾の)Lin博士との共同研究を行っています。
細胞がエクソソームを用いて分泌するGRP78はごく微量であり、正確な量を測定することは非常に困難です。 そこで当研究では伊藤研究室の持つ「チオNADサイクリングELISA法」というタンパク質の 超高感度測定技術を用いることで、これまで行われてこなかった細胞外GRP78の 定量的研究を可能にしています。
[研究結果・今後の展望]
これまでの研究では、複数種の培養がん細胞が分泌したエクソソーム中のGRP78の存在量をそれぞれ測定し、 がん細胞種ごとに存在量が異なることを明らかにしました。この違いはそれぞれのがん細胞の性質の 違いと関連しているのかもしれません。その場合、具体的ながん進行メカニズム解明に 結びつけることができます。
また、がん患者血清中のエクソソーム中GRP78の測定を行っており、 がんのステージや患者さんの予後との関連などを見る中で、生体内でのGRP78のがん進行作用を 明らかにしたいと考えています。

ページトップへ