非増幅核酸測定法の開発
最も主流な核酸測定法であるPCR法には、偽陰性、煩雑な操作、高いランニングコスト、
制約の多いプローブ設計等の課題がある。そこで我々は迅速・簡便で高感度な核酸測定法を新たに開発し、
PCR法の欠点の解決を試みている。
HybridizationとチオNAD酵素サイクリング法を組み合わせた新しい測定法を開発している。
測定対象に結合したALPが基質(Androsterone)を生成する。
その後、酵素(3α-HSD)が引き起こす基質の可逆的脱水素反応に伴い、チオNADHが蓄積される。
チオNADHは 415 nmに吸収極大を持つため、吸光度で測定対象を検出する。
本法は測定時間に対してシグナルが一次関数的に増幅する機構を二つ組み合わせているため、
シグナルが三角数的に増幅する特徴があり、迅速な測定に繋がる。
またHybridization時に用いているFITC標識プローブは、
ALPに比べて分子量が小さいため立体障害を防ぐのに役立っている。
結核菌が特異的に放出するタンパク質MPB64の塩基配列の測定を、我々の新しい測定法はPCR法に劣らない感度を実現できている。
測定容量が大きいため、偽陰性が起こりにくく、操作も簡便である。ランニングコストが低いことも魅力と言える。
そして増幅産物を考慮せずにプライマー設計できる柔軟性があり、頻繁に遺伝子変異が起こるウイルスの測定にも期待できる。
現在はInfluenza Virusの測定に挑んでいる。